サンゴの白化現象
様々な環境問題がありますが、沖縄県で特に注目されているのが、海の珊瑚(サンゴ)の白化問題です。
私が初めて宮古島に行ったときに、宮古島の住人である私の妻のお母さん(義母)が宮古の海を案内してくれました。
その時、せっかくだからと、観光用のグラスボート(ボートの底が透明になっていて、船上から海底を見ることができる舟です)に一緒に乗り込むことになったのです。
その時、私はグラスボートに乗るのは初めてでしたが、義母はグラスボートに乗るのは20年ぶりだとか。
地元の人ですから、観光用のボートなんて普段乗らないですもんね。
義母は、宮古のきれいなサンゴ礁を私に見せたかったのでしょう。
初めてグラスボートに乗った私は、船上から海底が見えてサンゴが見える景色に普通に感動していました。熱帯魚も見えましたし、一緒に乗っている観光客の子供もはしゃいでいました。
ボートから降りた後、義母は険しい表情をしていました。
「昔はもっときれいだったのに・・・」
と残念そうに、つぶやいていました。
確かにボート乗り場の写真では別世界のような七色のサンゴの写真が飾られていましたが、実際にはくすんだ同系色のサンゴしか見当たらなかったような気がします。
それでも、船頭さんが一生懸命良さげなポイントを回ってくれた感じでした。
現在の沖縄の海は、海がきれいと言われている宮古島でさえ昔と環境が変わり、色とりどりのサンゴが生息できる環境ではなくなってきているのが実際の所です。
義母の残念そうな顔が、心に残っています。
サンゴが多く生息している海は、生態系がバランスよく保たれている豊かな海と言われています。
『海の砂漠化』とも言われている、サンゴの白化問題とその対策について調べてみました。
サンゴの白化の原因
サンゴは動物です。
これ、最初聞いたときは驚きでした。
海の中の植物かと思っていましたが、生物学的には動けないけど動物なんですね。
クラゲとかイソギンチャクと同じ、『腔腸動物(こうちょうどうぶつ)』という種類で、触手も生えてます。
サンゴは生きるためにプランクトンも食べるようですが、養分の多くは光合成で生じた養分と酸素で生きているのです。
と言っても、サンゴは動物ですから、自分で光合成はできません。
サンゴは褐虫藻(かっちゅうそう)という藻類を体内に入れて共生しています。
褐虫藻が光合成をして、サンゴに栄養分と酸素を与え、代わりにサンゴから排出される二酸化炭素を褐虫藻が光合成の栄養にしている、という事で見事な 『Give and Take』の関係性なんですね。
※このサンゴと褐虫藻の共生は最近の研究で何億年も前から行われていたことが分かったんだとか。共に支えあう生命がそんな昔から。なんか神秘的ですね。
ところが・・・
この褐虫藻が、一斉にサンゴの体内から抜けて出て行ってしまったのです。
実はサンゴの色合いは褐虫藻の色素でもあり、褐虫藻が抜け出ていってしまったサンゴは、軸となる石灰の部分だけになるので、白く見えます。
そして、白くなったサンゴは養分と酸素が不足し、そのまま死んでしまうのです。
これが、サンゴの白化現象です。
なぜ、褐虫藻がサンゴの体内から一斉に抜け出ていってしまうのか?
主な原因として以下の2点があげられています。
① 海水温の上昇
② 環境汚染
この褐虫藻は水温に敏感なんです。
地球温暖化の影響もあり、昔よりも海水温が高くなってきました。
異常気象と呼ばれる年も多くなりましたが、特に台風が少ない年は、海水が攪拌されないので水温が高くなりがちです。
そのため、1998年の夏は特にサンゴの白化が拡がりました。
また、不法投棄や人口建造物などによる環境の変化や水質汚染で、サンゴ自体にストレスが掛かり、褐虫藻を追い出してしまうことも知られています。
観光地として有名な石垣島では、急増したマナーの悪い観光客によって海が汚されて、サンゴ礁が激減したことでも知られています。
サンゴの白化現象は、沖縄だけの問題ではありません。
400種類以上のサンゴが生息していて世界遺産にも登録されている、オーストラリアの大サンゴ礁域、『グレートバリアリーフ』でも、サンゴが白化現象でどんどん死んでいき、その領域を年々狭めているそうです。
温暖化の影響が拡がってきた1950年以降、世界の20%近いサンゴ礁が白化によって喪失しているのが現実です。
サンゴの白化問題への対策
お伝えしたように、サンゴの白化の主な原因は以下の2点です。
① 海水温の上昇
② 環境汚染
①の海水温の上昇は、やはり地球温暖化による異常気象が大きな影響を及ぼしています。
地球温暖化は、人間の活動によって、二酸化炭素などの温室効果ガスが排出されることによって、影響が悪化していきます。
家庭で一番二酸化炭素を排出している要素は、『電気の使用』です。
次が、自動車による『ガソリンの使用』。
よって、やはりまず私たちに出来ることは、
- 節電
- 自動車に乗ることを控えめにする
などの、省エネ活動になります。
②の環境汚染に関しては、海の水を汚さないこと。
海や川にゴミを流さないのはもちろんですが、普段の生活から以下のようなことを心掛けていきましょう。
- ストローやペットボトルなど分解に時間の掛かるプラスチック製品はなるべく使わない
- スーパーのビニル袋もなるべく使わない
- ゴミの分別をきちんと守る
- 発泡トレーなどはスーパーの回収ボックスへ
- 天ぷら油など、廃油などを生活排水に流さない
- 外出先では、特にゴミの持ち帰りを心がける
現在、恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者の方々によって、サンゴ復活のための研究が進められ、サンゴの養殖の効果が少しずつ出始めてきているようです。
そんなサンゴの養殖活動も応援していきたいですね。