電気自動車の闇とコバルト採掘の現実とは?

電気自動車が抱える環境と人道問題

電気自動車は「環境に優しい」「脱炭素社会に貢献する」などのイメージを持たれています。
しかし、その製造過程には深刻な課題が存在していることをご存じでしょうか?

特に、電気自動車のバッテリーに使われる「コバルト」の採掘問題が世界的に注目されています。
コンゴ民主共和国では、コバルト採掘のために多くの子供たちが危険な環境で労働を強いられています。

この記事では、電気自動車に欠かせないコバルトの採掘が抱える問題、そしてこの問題を解決するための取り組みについて詳しく解説します。

コバルト採掘が抱える児童労働と環境破壊

世界のコバルトの約7割がコンゴ民主共和国から

コバルトはリチウムイオン電池に不可欠な鉱物であり、世界のコバルト産出量の約68%がコンゴ民主共和国から採掘されています。

しかし、コンゴ民主共和国は世界でも貧困の深刻な国のひとつであり、鉱山労働に従事する子供たちが後を絶ちません。

児童労働の実態

特に、小規模採掘(ASM:Artisanal Small-Scale Mining)では、シャベルやツルハシなどの簡単な道具を使い、子供たちが鉱山で働いています。
安全管理が行き届かず、崩落事故が日常的に発生し、多くの子供が命を落としています。

実際に、コンゴのコバルト採掘場で働いている子供の数は約25,000人と推計されており、電気自動車の普及が進むにつれ、児童労働の拡大も懸念されています。

世界の企業も直面するコバルト問題

2019年、児童労働を巡り大企業が訴えられる

2019年12月、Apple、Microsoft、Dell、Teslaなどの大手企業が、コンゴ民主共和国の児童労働を巡る問題でアメリカで訴えられました。
訴訟では「企業がコバルトの児童労働に関与している」と指摘され、改めて問題が世界中に知られることとなりました。

しかし、大手企業が「私たちは児童労働に関与していない」と主張しても、現実にはコバルトのサプライチェーンを完全に管理するのは難しいのが現状です。
なぜなら、小規模採掘(ASM)と大規模採掘(LSM:Large-Scale Mining)から採れたコバルトが途中の流通過程で混ざり合い、児童労働によるものかどうか判断できないためです。

また、採掘されたコバルトの多くは中国企業に渡り、精錬された後に世界中のバッテリー工場へと供給されています。

このように、サプライチェーンの透明性が確保されていないことが問題をより複雑にしています。

コバルト問題を解決するための取り組み

コバルトフリーの電池開発

環境負荷や人権問題が指摘される中、近年「コバルトを使わない電池」の開発が進められています。

例えば、パナソニックは2025年までにコバルトを使用しない電池を実用化する計画を発表しました。
これは、コンゴ民主共和国の児童労働を減らすための重要な一歩となるかもしれません。

小規模採掘(ASM)に代わる安定した雇用の創出

国際的な支援団体やNGOでは、コバルト採掘以外の仕事を増やす取り組みを実施しています。
例えば、日本のNPO法人「テラルネッサンス」は、コンゴ民主共和国で洋裁や木工技術の職業訓練を提供し、安全な労働環境の創出を支援しています。

また、児童労働を防ぐためには「ただ禁止する」のではなく、安定した収入源を提供することが重要だと言われています。

しかしながら、これらの取り組みが広く実現するまでには多くの時間と資金が必要です。

私たちにできること

電気自動車の普及が進むにつれ、コバルトを巡る問題がますます深刻化しています。
では、私たちができることは何か?

  • コバルトフリーの技術開発を行う企業を応援する → 例えば、テスラやパナソニックなど、コバルトフリーの電池開発を進めている企業の最新動向をチェックする。
  • 児童労働問題に取り組む団体を支援する → NPO法人テラルネッサンスや他の支援団体の活動を知り、寄付やボランティアで支援する。
  • 企業に対し、サプライチェーンの透明性向上を求める → コバルトの調達ルートを公開している企業を選ぶ、SNSで意見を発信するなど、意識的な消費を心がける。

コバルトの問題は、電気自動車だけでなく、スマートフォンやノートパソコンのバッテリーにも関連しています。
持続可能な社会を実現するために、まずは私たち一人ひとりが問題を理解し、行動することが重要です。

この記事のまとめ

  • 電気自動車のバッテリーに使われるコバルトの約7割はコンゴ民主共和国で採掘されている。
  • 児童労働や採掘場の崩落事故が多発するなど、深刻な人権問題が指摘されている。
  • 大手企業も児童労働から距離を置く努力をしているが、サプライチェーン管理の難しさが課題。
  • コバルトフリーの電池開発や、安全な労働環境を作る支援活動が進められている。
  • 私たちにできることとして、コバルトフリー技術の応援や支援団体への協力がある。

※参考:国際労働機関(ILO)「児童労働の現状と取り組み」

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