次世代大型蓄電システム
現在、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの普及は進みましたが、天候や時間帯の影響で供給が不安定なので、必要なときに使えなかったり、供給過多になるのが問題となっています。
2018年秋には晴天続きで、再生エネルギーからの供給過多が原因で、九州電力では出力制御が行われました。
また、北海道地震で生じた北海道全域ブラックアウトを思い出してみましょう。
大規模な電力会社の発電機に問題が生じれば、広い地域で大規模な停電が起こってしまいます。
いずれもある程度の規模の蓄電システムがあれば、非常時にも活躍してくれますし、安定した電力の供給にも貢献してくれるので、大規模停電や出力制御といった問題も起こらずに済むわけです。
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リチウムイオン蓄電システムの限界
現在主流となっているリチウムイオンを用いた蓄電システムは、家庭用でも値段が200万円~300万円くらいが相場となっており、まだまだ高額でコストに課題があることは否めません。
当然大規模な蓄電システムをリチウムイオン電池で作ろうとすると、莫大なコストが掛かってしまうわけです。
「時代が進めば安くなるのではないか」
という楽観的な意見もありますが、調べてみるとリチウムイオン電池の原料となるコバルトという物質は中国が大量に買い占めに奔走しており、この先原料の供給は益々厳しくなることから、とても蓄電池の値段が下がるという楽観視はできないことが分かります。
そのような事情から日本国内でも、リチウムイオンに代わる蓄電システムを開発する動きが各所で見られています。
各種蓄電池の比較
災害時の非常用電源として、現在実用化されている蓄電システムを比較してみました。
種類 | スペック | 特徴など |
リチウムイオン電池 | ・エネルギー密度:200Wh/L ・充放電効率:80~90% ・寿命:5~15年(リサイクル寿命 ~10,000回) ・最大容量:~数MWh | 現在広く普及し、更なる高性能化も期待されている。 小型でも高いエネルギー密度により、EV用車載電池などにも活用されている。 しかし正極に用いられている資源、コバルトの限界が見えており、その調達リスクや需給見通しに注目が集まり、次世代蓄電池が期待されている。 |
レドックスフロー電池 | ・エネルギー密度:10Wh/L ・充放電効率:70~75% ・寿命:20年 ・最大容量:~数百MWh | レドックスとは、酸化還元反応のこと。 タンクやポンプが必要となることからシステム全体が大きくなるため、エネルギー密度は小さいが、電解液によっては劣化がないため長寿命。 不燃性または難燃性の材料から構成されるため、安全性が高く、容量もタンクを増やせばいいので、大規模な電力貯蔵用途に適している。 スイスのベンチャー企業であるnanoFlowcell®により、車載用の小型レドックスフロー電池も開発されている。 |
NAS電池 (ナトリウム-硫黄電池) | ・エネルギー密度:10Wh/L ・充放電効率:75~80% ・寿命:15年(リサイクル寿命 4,500回) ・最大容量:~数百MWh | 作動中はナトリウムと硫黄を溶融させ、伝導度を高く保つために、300℃程度の高温条件が必要となる。 鉛蓄電池と比較すると3倍のエネルギー密度で、約15年と長寿命であるため、電力貯蔵用途に適している。 日本ガイシ株式会社によって2002年から事業化されている。 |
次世代の蓄電システム
次に紹介するのは、大規模な電力施設用ですが、現在開発が進められている『次世代の蓄電システム』を簡単に紹介させて頂きます。
家庭用次世代蓄電池は以下の記事もご参照ください。
全固体電池 ― 次世代の蓄電池
圧縮空気蓄電
- 開発母体
- 早稲田大学、エネルギー総合工学研究所(IAE)
2017年4月 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトとして - 仕組みの概略
- 電力を利用して圧縮機で空気を圧縮して高圧状態で貯蔵。
電力が必要なときに、貯蔵した圧縮空気で発電機を回転させて再び発電を行う。 - メリットとデメリット
- 汎用機器の組み合わせで比較的簡単に構築できる。
空気と水しか排出しないのでクリーン。
圧縮空気を貯蔵するタンクの容量を自由に変えられる。
ただし、大型の設備となる。 - 備考
- 静岡県東伊豆風力発電所で実証実験が行われている。
次世代フライホイール蓄電システム(超伝導蓄電)
- 開発母体
- 山梨県、鉄道総合研究所、クボテック、古河電気工業、ミラプロ
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「安全・低コスト大規模蓄電システム技術」プロジェクト - 仕組みの概略
- 電力で円盤形のフライホールを回転させ、電気エネルギーを運動エネルギーに変換して貯蔵。
必要な時に回転している運動エネルギーから電力に変換。
超伝導技術で4トンもあるホイールを浮遊した状態で非接触で毎分6000回転を実現させることができる。
真空のシリンダに収めることで、空気抵抗によるエネルギーロスや熱の発生を抑えることができ、限りなくエネルギーロスをゼロに近づけることに成功している。 - メリットとデメリット
- 化学反応ではないので、機構的なロスを抑えれば、限界がない。
短時間で大きな電力を作れる。
ただし、超伝導状態で大規模な施設を制作するのが大変 - 備考
- 山梨県米倉山大規模太陽光発電所と連携し実証実験中
次世代の蓄電システムはどれも期待大ですね!
実現を陰ながら応援します!