海水の酸性度上昇で貝やサンゴが消える!?
国立研究開発法人海洋研究開発機構特任参事であり、国際海洋環境情報センター長の白山義久氏によるご意見。
今世紀最後の頃となる2090年~2100年頃には、日本周辺にはサンゴが生育するのに適切な場所がなくなってしまう可能性がある、とのことです。
その直接的原因が、『海水の温暖化』+『海水の酸性化』というものです。
サンゴ礁は、海水温度の上昇によって共生している藻類が死んでしまうことによってサンゴも死んでいってしまうことが知られています。
さらに追い打ちを掛けるのが、『海水の酸性化』と呼ばれる現象で、これによって海洋の生態系が崩れていってしまいます。
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海水の酸性化と地球温暖化との関係
水の酸性度に関しては、聞いたことがある方が多いかと思います。
水溶液は酸性・中性・アルカリ性と分かれており、pHという単位で表されます。
pHが7の時が中性、それ以上がアルカリ性、それ以下が酸性となります。
海水はもともと弱アルカリ性(pH8.17程度)でした。
地域や季節によって前後しますが、現代では海水が全体的に徐々に酸性化が進んでいるというのです。
その原因は、大気中に二酸化炭素が増えることで、海洋中にも二酸化炭素が溶け込んでしまうことです。
CO2+H2O → H2CO3 → H++HCO3-
※結果的に、海水内に水素イオンが増えて、酸性化していく。
海水の酸性化の問題点
①サンゴ礁の危機
サンゴや貝は、海中のカルシウムイオンと炭酸イオンが元となる炭酸カルシウムで自身の骨格や殻をつくっています。
産業革命以前の人間の活動の影響が少なかった時代には、海中に炭酸イオンが豊富にありました。
しかし、海中に二酸化炭素が溶け込むことで炭酸イオンを減らし、酸性化することで、成長に必要な炭酸カルシウムを作ることが困難になってしまいます。
結果的に、貝やサンゴ礁は自身の丈夫な体を作ることができず、数を減らしていくことになってしまうのです。
②海の生態系に悪影響
海水の酸性化が進むと、海中の一定数のプランクトンが生育が難しくなります。
特に、炭酸カルシウムの殻を持っている翼足類と呼ばれるプランクトンなどは、殻が溶けて浮力が高まり、海底に沈まなくなるので、それらを餌にしていた海底付近の生き物(タラバガニやヒラメの仲間など)は影響が大きく、数を減らすことに繋がります。
また、円石藻と呼ばれる植物性プランクトンなども殻がつくれなくなって生育が困難になることで、食物連鎖的に動物プランクトンの減少、そして魚の減少へと繋がってきます。
プランクトンだけではなく、魚類でもタラなどは酸性化に対して抵抗力が弱く、実験結果によればタラの稚魚は酸性化した環境だと全滅してしまうそうです。
将来的には海中では酸性化に耐性のある生き物だけが生き残れる世界になるかもしれません。
現実に目を背けても何も解決しないので、まずは事実を認識し、出来ることから手を付けていけたらと思います。